黒ナンバーの安全管理者とは?2027年3月31日までにやることを現役ドライバーが解説
黒ナンバー(軽貨物)の全事業者に義務付けられた貨物軽自動車安全管理者。いつまでに・どこで講習を受け、いくらかかるのか。選任期限2027年3月31日までにやることを現役ドライバーが解説します。
公開日: 2026年7月12日 / 最終更新: 2026年7月14日
黒ナンバー(軽貨物)の全事業者が対象です。従業員を雇っていない1人親方であっても、2027年3月31日までに講習を受けて「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、運輸支局等へ届出する必要があります。
これは2025年4月1日に施行された改正法令にもとづく義務で、対象は貨物軽自動車運送事業者の全員です。「自分は1台でやっているだけだから関係ない」とはならない制度なので、この記事で全体像とやることを整理しておきましょう。
私も現場で配送をしながらこの準備を進めてきました。実際にやってみると手順そのものは難しくありませんが、「何を」「いつまでに」やるのかを知らないままだと後回しになりがちです。順番に見ていきます。
2025年4月から軽貨物の安全対策が義務になった
国土交通省の資料によると、貨物軽自動車運送事業者における重大事故が増加していることを踏まえて2024年(令和6年)に法令が改正され、2025年(令和7年)4月から安全対策が強化されました。
これまで一般貨物(緑ナンバー)には運行管理者の制度がありましたが、軽貨物(黒ナンバー)には同じような安全管理の仕組みがありませんでした。宅配需要の拡大で軽貨物ドライバーが増えるなか、安全管理の体制を軽貨物にも広げたのが今回の改正、というのが大きな流れです。
2025年4月から新しく義務になった主な項目は次のとおりです。
- 貨物軽自動車安全管理者の講習受講
- 貨物軽自動車安全管理者の選任・届出
- 初任運転者等への指導および適性診断の受診
- 業務の記録(1年間保存)
- 事故の記録(3年間保存)
- 国土交通大臣への事故報告
このほか、点呼(アルコール検知器での酒気帯び確認と点呼記録簿の1年間保存)や過積載の防止などは、引き続き実施が必要な義務として整理されています。
このうち「事故の記録」は、動物との衝突のような単独事故でも実務的に重要になる項目です。黒ナンバーが遭いやすい動物衝突事故と保険の盲点、事故時の記録の残し方は黒ナンバーは動物との衝突事故に注意。保険で補償されない盲点に詳しくまとめています。
いつまでにやる?対象は黒ナンバーの全事業者。1人親方は「自分を選任」する
貨物軽自動車安全管理者は、営業所ごとに選任しなければなりません。ここでいう営業所は、多くの個人事業主にとっては自宅(事業の拠点)のことです。
大事なのは、従業員がいるかどうかは関係ないという点です。国土交通省のリーフレットにも「一人で事業を行っている場合でも、自ら安全対策を実施する必要があります」とはっきり書かれています。1人親方の場合は、自分が講習を受けて、自分自身を安全管理者として選任することになります。
期限は開業の時期によって変わります。
| 事業者の区分 | 選任の期限 |
|---|---|
| 2025年3月31日までに経営届出済みの既存事業者 | 2027年3月31日まで |
| 2025年4月1日以降に経営届出をした新規事業者 | 猶予なし。速やかに選任 |
つまり、以前から黒ナンバーで走っている方は経過措置として2027年3月31日まで猶予がありますが、最近開業した方は「今すぐやるべきこと」になっている点に注意してください。
やることは3ステップ: 講習を受けて、選任して、届出する
手順はシンプルで、次の3ステップです。
ステップ1: 登録講習機関で講習を受ける(どこで受ける?費用は?)
まず、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で「貨物軽自動車安全管理者講習」を受講します。どの機関で受けられるかは国土交通省のウェブサイトに一覧が掲載されています。
費用や所要時間は機関によって異なりますが、例えばNASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)の場合、講習時間は5時間、手数料は3,700円で、eラーニング(eナスバ)形式で受講できます(2026年7月時点)。自宅のパソコンやスマホで受けられるので、配送の合間に進めやすいのがありがたいところです。
実際にeナスバで受講したときの流れや感想(カメラ監視の実際・テストの難易度など)は、貨物軽自動車安全管理者講習を受けてみた体験記に詳しく書いています。
なお、講習は一度受けて終わりではありません。選任後も2年ごとに定期講習を受講する必要があります。
ステップ2: 安全管理者を選任する
講習を修了したら、営業所ごとに安全管理者を選任します。1人親方なら自分自身です。選任される人は講習の内容を理解し、点呼や記録といった安全対策を実際に回していく役割を担います。
ステップ3: 運輸支局等へ届出する
選任したら、運輸支局等を通じて国土交通大臣に届出します。国土交通省の資料では、届出事項として主に次の項目が挙げられています。
- 貨物軽自動車運送事業者の氏名または名称
- 貨物軽自動車安全管理者の氏名および生年月日
- 安全管理者の選任年月日および講習修了年月日
届出の様式や提出方法の細かい部分は、所轄の運輸支局の案内に従ってください。国土交通省のリーフレットから様式のページに進むこともできます。
あわせて期限があるもの: 初任運転者への指導と適性診断
安全管理者の選任と並んで、もうひとつ期限つきの義務があります。特定の運転者への「特別な指導」と「適性診断の受診」です。対象となるのは次の運転者です。
- 初任運転者(過去に一度も特別な指導・適性診断を受けていない人)
- 高齢者(65歳以上の人)
- 死者または負傷者が生じた事故を引き起こした人
こちらの経過措置は、2025年3月31日までに経営届出を済ませた既存事業者の場合で2028年3月31日までとされています。安全管理者の選任(2027年3月31日)より1年あとですが、2025年4月以降に開業した事業者には猶予がない点は同じです。
また、運転者の氏名や指導・適性診断の受診状況などを記載した「貨物軽自動車運転者等台帳」を作成し、営業所に備え置くことも求められています。1人親方でも、自分の受診記録を残しておくということです。
講習の免除はある?
「自分は受けなくていいのでは」と気になる方もいると思うので、先に結論を書いておくと、原則として免除はありません。1人親方を含む黒ナンバーの全事業者が対象です。
唯一の例外は、国土交通省の制度資料に挙げられている「貨物軽自動車運送事業者が一般貨物自動車運送事業等を経営する場合に、その運行管理者として選任されている者」を安全管理者に選任するケースです。つまり緑ナンバーの事業も営んでいて運行管理者が現にいる会社の話なので、軽貨物専業の個人事業主にはまず当てはまりません。免除の詳細と、受けなかった場合に何が起きるかは軽貨物の安全管理者講習に免除はある?受けないとどうなる(罰則)で掘り下げています。
期限を過ぎるとどうなる?
経過措置の期限を過ぎても安全管理者を選任していない場合、法令上の義務違反の状態になります。行政からの指導や監査の対象になり得るほか、法令には罰則の規定もあるとされています。
ただ、罰則の具体的な内容や運用は状況によって異なるため、この記事では断定しません。正確な情報は記事末に掲載している国土交通省の一次資料や、所轄の運輸支局で確認してください。
個人的には、「罰則が怖いから」というより、荷主や元請けから安全管理体制を問われたときに「対応済みです」と言えるかどうかが、これからの軽貨物では効いてくると感じています。委託契約の場面で法令対応の状況を確認される流れは、今後強まることはあっても弱まることはないはずです。
まとめ: 講習の予約と、記録の習慣化から始めよう
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 黒ナンバーの全事業者(1人親方含む)に貨物軽自動車安全管理者の選任義務がある
- 既存事業者の期限は2027年3月31日。新規開業者は猶予なし
- やることは「講習受講 → 選任 → 運輸支局等へ届出」の3ステップ
- 初任運転者等への指導・適性診断は2028年3月31日までの経過措置
- 点呼記録・業務記録は1年間、事故記録は3年間の保存義務がある
今日からできることは2つです。ひとつは講習の申し込み。eラーニングなら数日で修了まで進められるので、期限が近づいて講習が混み合う前に済ませておくのが安心です。
もうひとつは、点呼と記録の習慣化です。安全管理者に選任されたあと実際に毎日回していくのは、乗務前後の点呼と記録の作成・保存です。国土交通省もスマホでの記録を認めているので、紙にこだわる必要はありません。まずは無料の点呼記録簿テンプレート(Excel/PDF)で記録を始めて、慣れてきたら記録・保存・期限管理までまとめてできるKEI録のようなアプリに移行するのが、現場感覚としては無理のない進め方だと思います。
制度対応は「知ってしまえば大したことはない」ものがほとんどです。期限にはまだ余裕がありますが、講習の受講だけでも先に済ませておきましょう。
出典
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業者の安全対策が強化されました」リーフレット: https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001768524.pdf
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」: https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html
- NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)「貨物軽自動車安全管理者講習」: https://www.nasva.go.jp/fusegu/kamotsu_kousyu.html
- NASVA「eラーニング(eナスバ)による講習のご案内」: https://www.nasva.go.jp/fusegu/elearning_anzen.html
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令の適用は事業者ごとの状況により異なるため、最終的な判断は国土交通省の一次情報や所轄の運輸支局でご確認ください。
よくあるご質問
1人で軽貨物をやっていますが、安全管理者の選任は必要ですか?
必要です。貨物軽自動車安全管理者の選任は黒ナンバーの全事業者が対象で、従業員のいない1人親方の場合は、自分自身が講習を受けて、自分を安全管理者として選任し、届出します。
選任の期限はいつまでですか?
2025年3月31日までに貨物軽自動車運送事業の経営届出を済ませている既存の事業者は、2027年3月31日までに選任が必要です。2025年4月1日以降に届出をした新規の事業者には猶予期間がなく、速やかに選任する必要があります。
講習はどこで受けられますか?費用はどのくらいですか?
国土交通大臣の登録を受けた講習機関で受講します。費用や形式は機関により異なりますが、例えばNASVA(自動車事故対策機構)の場合、講習時間5時間・手数料3,700円のeラーニング形式で実施されています(2026年7月時点)。
講習は一度受ければ終わりですか?
選任前の講習に加えて、選任後も2年ごとに定期講習を受講する必要があります。一度受けて終わりではない点に注意してください。
講習の免除はありますか?
原則としてありません。1人親方を含む黒ナンバーの全事業者が対象です。唯一の例外として、同じ事業者が一般貨物自動車運送事業等も経営していて、その運行管理者として選任されている人は講習なしで安全管理者に選任できるとされていますが、軽貨物専業の個人事業主には当てはまりません。詳しくは免除と罰則の解説記事をご覧ください。
点呼や業務の記録は紙でないとだめですか?
紙である必要はありません。国土交通省の資料に、各種の記録・保存はパソコンやスマートフォンで実施可能と明記されています。スマホアプリやExcelでの記録も認められます。