一人親方の点呼のやり方。1人で運行する軽貨物ドライバーも点呼と記録が必要です
軽貨物(黒ナンバー)は1人親方でも点呼の実施と記録(1年間保存)が義務です。2025年4月施行の安全対策強化を踏まえ、乗務前後の確認事項と自分で点呼するやり方を現役ドライバーが解説します。
公開日: 2026年7月12日
結論から言うと、黒ナンバーの軽貨物で運送業をしているなら、1人で運行している一人親方でも点呼の実施と記録が義務です。2025年4月1日に施行された改正法令で貨物軽自動車運送事業者の安全対策が強化され、点呼を実施したうえで点呼記録簿に記録し、1年間保存することが求められています。
「点呼って、管理者がドライバーに対してやるものでは?」と思うかもしれません。私も最初はそう思いました。ですが国土交通省のリーフレットには、「一人で事業を行っている場合でも、自ら安全対策を実施する必要があります」とはっきり書かれています。点呼の確認事項についても「一人で事業を行っている場合は、自ら確認を行ってください」とされていて、相手がいないから免除、にはなりません。自分で自分に点呼をして、記録を残す。これが1人親方の点呼です。
やること自体は難しくありません。この記事では、点呼で何を確認するのか、1人の場合にどう実施するのか、記録をどう残すのかを順番に整理します。
そもそも点呼とは?乗務前・乗務後に確認する法定事項
点呼とは、乗務の前後に運転者の状態や車両について必要事項を確認し、運行の安全を確保するために必要な指示をすることです。国土交通省の資料では、法令で定められている確認事項と実施タイミングが次のように整理されています。
| 法令で定められている確認事項 | 確認方法の例 | タイミング |
|---|---|---|
| 運転者の酒気帯びの有無 | アルコール検知器で確認し、運転者の状態を目視でも確認 | 乗務前・乗務後 |
| 疾病、疲労、睡眠不足などにより安全な運転ができないおそれの有無 | 体温や血圧、顔色、呼気の臭い、声の調子で確認 | 乗務前 |
| 業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況 | 気になる点がなかったかを確認 | 乗務後 |
| 車両の日常点検の実施またはその確認 | エンジンルーム内、ライト、タイヤ、運転席周りを目視等で確認 | 乗務前 |
ポイントは2つあります。ひとつは、酒気帯びの確認は乗務前だけでなく乗務後にも行うこと。もうひとつは、乗務前に運転者や車両に何らかの問題が確認された場合は、運行してはいけないとされていることです。点呼は「やったことにする儀式」ではなく、走ってよい状態かどうかを判断する関所のようなものだと考えるとしっくりきます。
1人の場合のやり方: 毎朝のルーティンに組み込む
管理者がいない1人親方の場合、上の表の確認を自分で行います。国土交通省の資料でも、一人で事業を行っている場合は自ら確認を行うこととされていて、加えて「ご家族と同居している場合には、自身の体調を客観的に見てもらうことも有効です」と案内されています。同居の家族に「顔色どう?」と聞くだけでも、自分では気づかない不調のサインを拾えることがあります。
実際の流れは、毎朝のルーティンにしてしまうのが一番です。私の場合は次のような順番で、出発前の2〜3分で終わります。
- アルコール検知器で測定する。 起きて身支度を済ませたら、車に乗る前に検知器に息を吹き込みます。数値(または合否)を確認します
- 体調をセルフチェックする。 熱っぽくないか、頭痛や強い眠気はないか、昨夜はちゃんと眠れたか。鏡で顔色を見るのも意外と役に立ちます
- 車をひと回り見る。 タイヤの空気圧と傷、ライト類の点灯、ウインカー。日常点検とあわせて行えば二度手間になりません
- 記録をつける。 日時、検知器の結果、体調、車両の状態をその場で記録します。後でまとめて書こうとすると忘れます
そして帰着後、乗務後の点呼として、酒気帯びの確認(検知器)と、その日の車両・道路・運行の状況に気になる点がなかったかを確認して記録します。ヒヤリとした場面があったら、その内容もメモしておくと翌日以降の自分への引き継ぎになります。
「自分で自分に点呼なんて形式的では」と感じるかもしれませんが、毎日続けていると、体調の小さな変化や車の異変に気づくタイミングが確実に早くなります。荷物を届ける仕事は、身体と車が資本です。法令対応と自分の身を守ることが同じ行動で済むのだから、やらない理由はないというのが現場の実感です。
アルコール検知器は必須。飲まない人も測って記録する
点呼の確認事項のうち、酒気帯びの有無の確認はアルコール検知器を用いて行うこととされています。「お酒を飲まないから関係ない」ではなく、飲まない人も検知器で測定して、その結果を記録するのがルールです。むしろ飲まない人ほど、毎日「0.00」の記録が積み上がっていくので、いざというときに自分の潔白を示す材料になります。
検知器そのものは、市販の携帯型のものが数千円程度から入手できます。どの機種を選ぶべきか、精度の基準など機器の細かい要件についてはこの記事では断定しません。購入前に不安があれば、所轄の運輸支局や販売元に確認するのが確実です。ひとつ現場感覚で言えるのは、電池切れとセンサーの寿命には気をつけるということです。測ろうとしたら動かない、では点呼になりません。予備の電池を車に積んでおくと安心です。
記録の書き方と保存: 1年間、紙でもスマホでもOK
点呼は実施するだけでなく、内容を点呼記録簿に記録したうえで1年間保存しなければなりません。記録する項目は主に次のとおりです。
- 点呼を実施した者の氏名(1人親方なら自分)
- 運転者の氏名(同じく自分)
- 点呼の日時
- 点呼の方法(対面・電話その他の方法)
- 酒気帯びの有無(アルコール検知器を使用した確認結果)
- 疾病・疲労・睡眠不足などの健康状態
- 運行の安全を確保するために必要な指示事項
- 乗務後は、車両・道路・運行の状況の報告内容
「実施者も運転者も自分なのに両方書くの?」と思うかもしれませんが、記録簿の様式としては両方の欄を埋めます。1人親方の場合は同じ名前が並ぶだけなので、書く手間はほとんどありません。
形式は紙でなくても大丈夫です。国土交通省の資料に、各種の記録・保存はパソコンやスマートフォンにて実施可能と明記されています。毎日のことなので、続けやすい方法を選ぶのが一番です。これから始める方は、無料の点呼記録簿テンプレート(Excel/PDF)を用意しているので、まずはこれで今日から記録を始めてみてください。項目が最初から並んでいるので、埋めるだけで法定項目をカバーできます。
まとめ: 点呼は「毎朝の2〜3分」に落とし込めば続く
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 1人親方でも点呼の実施と記録は義務。自分で確認して自分で記録する
- 確認事項は、酒気帯び(検知器使用・乗務前後)、健康状態(乗務前)、車両・道路・運行の状況(乗務後)、日常点検(乗務前)
- 乗務前に問題があれば運行してはいけない
- 記録は点呼記録簿に毎日つけて1年間保存。紙でもパソコン・スマホでも可
続けるコツは、意思の力に頼らないことです。検知器を車の鍵と同じ場所に置く、測ったらその場で記録する、と動作をセットにしてしまえば、歯磨きと同じで考えなくても回るようになります。逆に「今日は急いでいるから後で」を一度許すと、記録は簡単に途切れます。
記録が習慣になってきたら、保存や期限管理まで含めて仕組み化するのが次のステップです。点呼記録・業務記録・事故記録をまとめて管理できるKEI録のようなアプリを使えば、「あの日の記録どこだっけ」と探すこともなくなります。まずは明日の朝、検知器で測って一行記録する。そこから始めましょう。
出典
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業者の安全対策が強化されました」リーフレット: https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001768524.pdf
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令の適用は事業者ごとの状況により異なるため、最終的な判断は国土交通省の一次情報や所轄の運輸支局でご確認ください。
よくあるご質問
1人で運行していますが、点呼は本当に必要ですか?
必要です。国土交通省のリーフレットに「一人で事業を行っている場合でも、自ら安全対策を実施する必要があります」と明記されており、点呼の確認事項についても「一人で事業を行っている場合は、自ら確認を行ってください」とされています。点呼する相手がいなくても、自分で確認して記録を残します。
アルコール検知器は必ず使わないといけませんか?
はい。酒気帯びの有無の確認は、アルコール検知器を用いて行います。国土交通省の資料でも、確認方法として「アルコール検知器を用いて、酒気帯びの有無を確認するとともに、運転者の状態を目視で確認します」と示されています。
点呼の記録は何年保存すればいいですか?
1年間です。点呼の内容は日々点呼記録簿に記録したうえで、1年間保存しなければなりません。なお業務の記録も1年間、事故の記録は3年間の保存が必要です。
点呼の記録はスマホやパソコンでもいいですか?
問題ありません。国土交通省の資料に、各種の記録・保存はパソコンやスマートフォンにて実施可能と明記されています。紙の点呼記録簿にこだわる必要はなく、Excelやスマホアプリでの記録も認められます。