軽貨物を法人でやるときの記録管理。1人親方と何が違うのか
軽貨物を法人・複数台で運営する場合、1人親方とは義務の範囲が変わります。営業所ごとの安全管理者選任、運転者等台帳の備え置き、初任運転者への指導と適性診断まで、法人特有の管理項目を整理します。
公開日: 2026年7月20日
軽貨物の法定記録について書かれた情報の多くは、1人親方を前提にしています。「自分で点呼して、自分で記録する」という話です。
ですが、ドライバーを複数抱えて法人で運営している場合、話はそれだけでは終わりません。人を抱えることで、新しく発生する管理項目があります。
この記事では、法人・複数台で運営する場合に何が増えるのかを整理します。日々の記録そのものの義務は1人親方と同じなので、そこは制度解説の記事に譲り、ここでは差分だけを扱います。
前提:日々の記録義務は、法人でも1人親方でも同じ
まず確認しておくと、2025年4月施行の改正で求められる日々の記録は、事業規模にかかわらず同じです。
| 記録の種類 | 保存期間 |
|---|---|
| 点呼の記録(アルコールチェック含む) | 1年間 |
| 業務の記録(いわゆる運転日報) | 1年間 |
| 日常点検の記録 | 1年間 |
| 事故の記録 | 3年間 |
「うちは法人だから緩い」も「1人だから免除」もありません。 ここは同じ土俵です。
違いが出るのは、この先です。
違い①:安全管理者は「営業所ごと」に選任する
貨物軽自動車安全管理者は、営業所ごとに選任しなければなりません。
1人親方の場合、営業所は自宅(事業の拠点)ひとつなので、自分を選任して終わりです。しかし営業所が複数あれば、その数だけ選任が必要になります。
拠点を増やす計画があるなら、その都度「誰を選任するか」「その人は講習を受けているか」が発生する、ということです。選任には講習の修了が前提になるので、拠点を開ける前に講習を受けさせておく必要があります。
なお選任後は、2年ごとの定期講習も必要です。人数が増えるほど、この管理は煩雑になります。
期限まわりの全体像は選任・届出の期限を一覧で整理した記事にまとめています。
違い②:運転者等台帳の備え置き
貨物軽自動車運転者等台帳の作成と、営業所への備え置きが求められています。
記載する内容として、国土交通省の資料では運転者の氏名や、特別な指導・適性診断の受診状況などが挙げられています。
1人親方でも「自分の受診記録を残す」という形で対象になりますが、人数が増えると台帳の維持そのものが業務になります。誰がいつ何を受けたか、退職した人の分はどうするか、といった管理が発生するためです。
違い③:ドライバーが増えるたびに手続きが発生する
これが法人でいちばん見落とされやすい部分だと思います。
特別な指導と適性診断の対象になるのは、次の運転者です。
- 初任運転者(過去に一度も特別な指導・適性診断を受けていない人)
- 高齢者(65歳以上の人)
- 死者または負傷者が生じた事故を引き起こした人
つまり、新しくドライバーを採用するたびに「初任運転者」が発生します。
1人親方なら自分の分を一度やれば終わりですが、法人では採用のたびに繰り返し発生する。しかも受診させたら台帳への記載も必要になります。
なお経過措置は、2025年3月31日までに経営届出を済ませた既存事業者の場合で2028年3月31日までです。安全管理者の選任期限(2027年3月31日)より1年あとですが、2025年4月以降に開業した事業者に猶予がない点は同じです。
違い④:「自分が記録する」から「記録させて、確認する」へ
ここは法令の条文というより、実務上の変化です。
1人親方の記録管理は、自分がやったかどうかを自分が知っています。忘れれば自分で気づきます。
しかし複数のドライバーを抱えると、「今日、全員が点呼を記録したか」が自動的には分からなくなります。誰か1人が記録を飛ばしていても、その場では誰も気づかない。そして記録は遡って作れません(遡っての記載は虚偽記載にあたります。詳しくは点呼記録簿の書き方)。
紙やExcelで運用している場合、これを把握する方法は「月末に集めて数える」しかありません。その時点で抜けが見つかっても、もう埋められないわけです。
法人で記録管理を考えるとき、本当に必要なのは記録の様式そのものよりも、実施状況を日々把握できる仕組みだと思います。
委託ドライバーの記録について
「業務委託しているドライバーの記録は誰が管理するのか」という質問をよく受けます。
この記事では断定を避けます。 契約形態によって責任の所在が変わり、一律に言えないためです。実際の運用は、契約内容と所轄の運輸支局の見解を確認してください。
そのうえで実務的な感覚を書くと、事業者側が実施状況を把握できる状態にしておくほうが安全です。荷主や元請けから安全管理体制を問われたとき、「委託先のことは分かりません」では通りにくい場面が増えていると感じます。
まとめ:法人で増えるのは「人に紐づく管理」
整理すると、こうなります。
| 1人親方 | 法人・複数台 | |
|---|---|---|
| 日々の4記録 | 必要 | 必要(同じ) |
| 安全管理者の選任 | 自分1人 | 営業所ごと |
| 定期講習(2年ごと) | 自分の分 | 選任者の人数分 |
| 運転者等台帳 | 自分の分 | 在籍者全員分 |
| 初任運転者への指導・適性診断 | 一度きり | 採用のたびに発生 |
| 実施状況の把握 | 自分で分かる | 仕組みが必要 |
**増えるのはすべて「人に紐づく管理」**です。台数が増えるより、人が増えるほうが管理は重くなります。
まずは記録の様式を整えるところからで構いません。無料の点呼記録簿テンプレートをご利用ください。
そのうえで、全ドライバーの実施状況を管理者が一覧で確認したい、選任期限や定期講習の管理まで自動化したいということであれば、KEI録をご検討ください。管理者アカウントから、誰の記録が抜けているかをその日のうちに把握できます。私たち自身が運送の現場でこの管理をしているので、必要な機能はそこから作りました。
出典
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業者の安全対策が強化されました」リーフレット: https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001768524.pdf
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」: https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令の適用は事業者ごとの状況により異なるため、最終的な判断は国土交通省の一次情報や所轄の運輸支局でご確認ください。
よくあるご質問
法人でも1人親方でも、義務の内容は同じですか?
日々の記録(点呼・日常点検・業務・事故)の義務は同じです。ただし法人では、営業所ごとの安全管理者選任、運転者等台帳の備え置き、初任運転者等への特別な指導と適性診断など、人を抱えることで発生する管理項目が加わります。
営業所が複数ある場合、安全管理者は何人必要ですか?
貨物軽自動車安全管理者は営業所ごとに選任する必要があります。営業所が複数あれば、その数だけ選任が必要になります。
運転者等台帳とは何ですか?
運転者の氏名や、特別な指導・適性診断の受診状況などを記載した帳簿です。作成して営業所に備え置くことが求められています。1人親方の場合も自分の受診記録を残す必要があります。
ドライバーを採用したら、何をすればいいですか?
初任運転者(過去に一度も特別な指導・適性診断を受けていない方)にあたる場合、特別な指導と適性診断の受診が必要です。あわせて運転者等台帳への記載も発生します。採用のたびに繰り返し発生する手続きです。
委託ドライバーの記録は、誰が管理するのですか?
この記事では断定を避けます。契約形態によって責任の所在が異なるため、実際の運用は契約内容と所轄の運輸支局の見解を確認してください。ただし実務としては、事業者側が記録の実施状況を把握できる状態にしておくことが安全です。