FOLIO 11 KEI録 / Column

ドライバーに記録をつけてもらう、が一番難しい。月末に気づいても、もう遅い

軽貨物を法人で運営するとき、法定記録の本当の難所は様式ではなく「人につけてもらうこと」です。紙だと抜けに気づくのが月末になり、遡って書けば虚偽記載になる。管理者側の実務を、運送の現場から書きます。

公開日: 2026年7月20日

軽貨物の法定記録について、様式や書き方の情報はたくさんあります。ですが、法人でドライバーを抱えて運営していると、本当に難しいのはそこではありません。

人に、毎日つけてもらうこと。 これが一番難しい。

この記事は、記録を「つける側」ではなく「つけてもらう側」の話です。1人親方の方には関係のない、法人特有の悩みを扱います。

紙だと、月末まで気づけない

私たちの運用は、紙のテンプレートを配布するところから始まりました。「これに毎日記入してください」と渡す。それが基本形です。

そして抜けに気づくのは、たいてい月末でした。

提出してもらって初めて、1ヶ月分の記録が把握できる。そこで空欄が見つかる。しかしその時点では、もう埋められません。

記録を後から遡って書くことは、虚偽記載にあたります(詳しくは点呼記録簿の書き方に書きました)。つまり月末に気づいた抜けは、気づいた時点で確定した抜けです。

管理者は、サボっていたわけではない

ここは強調しておきたいところです。

「なぜ声をかけなかったのか」と思われるかもしれませんが、声をかけたくても、誰にかければいいのかが分からなかったのです。

紙の運用では、その日にドライバーが記録をつけたかどうかを知る方法がありません。ドライバーの手元に紙があり、それが提出されるのは月末です。管理者の意識の問題ではなく、情報がない

これは、多くの法人で同じ構造だと思います。

もっと厄介な問題:提出されても、本物か分からない

抜けよりも、実はこちらのほうが根が深いと感じています。

提出された記録が、本当に日々つけられたものなのか。それとも提出直前にまとめて書かれたものなのか。紙では判別できません。

日付が並んでいて、欄が埋まっている。書類としては完璧に見える。でも、それが1ヶ月かけて毎日書かれたのか、前日の夜に一気に埋められたのかは、受け取った側には分かりません。

そして後者であれば、それは虚偽記載です。書類が揃っていることと、法令を守れていることは、同じではありません。

法人の管理者が背負っているのは、「記録を集める責任」ではなく「正しく記録させる責任」だと思います。集めた書類の束は、その責任を果たした証拠にはなりません。

なぜドライバーはつけないのか

理由はシンプルで、面倒だからです。これが圧倒的に多い。

私自身も紙で記録していた頃、同じことを感じていました。1日15〜20分の作業ですが、長いから面倒なのではありません。まだ起こっていない事故に対する担保だから、優先順位が下がるのです。今日も無事に終わった、その事実を書き残す作業に、意味を見出しにくい。

周りのドライバーに聞いても、ほぼ全員が同じことを言っていました。自分の安全のためだと頭では分かっている。それでも負担感のほうが大きい。

このあたりの経緯は紙の記録をやめるまでの3か月に詳しく書きました。

アプリにすると、別の壁が出る

正直に書きます。アプリにすれば全部解決する、という話ではありません。

「面倒」という壁は、アプリにしても完全には消えません。入力の手間は減りますが、記録という行為そのものがなくなるわけではないからです。

そしてもうひとつ、紙にはなかった壁が生まれます。操作に慣れていない人がつまずく、という問題です。

傾向としては、デジタル機器に慣れていない方ほど時間がかかります。ただ、主語を年齢にすると実態を外します。 私たちの現場では、年配の方でもデジタル機器が好きな方はすぐに使いこなしていました。年齢よりも個人差のほうがはるかに大きいというのが実感です。

そして重要なのは、使えないままの人はいなかったということです。慣れていないだけなので、何度か丁寧に対応すれば、必ず使えるようになりました。 「この人には無理」と諦める必要はありません。

つまずいている人を早く見つけて、個別に手当てする。それができるかどうかが分かれ目です。そしてそれは結局、誰が記録できていないかが日々見えるかどうかに戻ってきます。

変わったのは「その日のうちに分かる」こと

いま私たちは、管理者の画面で全ドライバーのその日の実施状況を一覧で確認しています。

効果を数字で示せる段階ではありません。 運用を始めてまだ日が浅く、「抜けが何%減った」と言えるだけのデータがないからです。ここは正直に書いておきます。

そのうえで、確実に言えることがあります。

  • 月末まで分からなかった抜けが、その日のうちに分かる
  • 気づいたら、その日に声をかけられる
  • 声をかければ、その場で対応してもらえる

この3つが繋がったことが、実務としては大きな転換点でした。

月末に「先月ここが抜けていました」と言っても、相手にできることは何もありません。ですがその日のうちに「今日の乗務前点呼が入っていないようです」と伝えれば、たいていその場で記録してもらえます。指摘が、責任追及ではなく単なる確認になるわけです。

この違いは、管理者とドライバーの関係にとっても小さくないと感じています。

まとめ

法人で法定記録を管理するとき、難所は様式ではありません。

  • 紙だと抜けに気づくのが月末になる。その時点では遡って書けない(虚偽記載になるため)
  • 提出された記録が日々つけられたものかは、紙では判別できない
  • ドライバーがつけない理由は、ほぼ「面倒」。まだ起きていない事故への担保だから優先度が下がる
  • アプリにしても面倒は完全には消えず、操作に不慣れな人がつまずく壁が新たに出る
  • ただし慣れの問題なので、丁寧に対応すれば必ず使えるようになる
  • 決定的なのは、誰の記録が抜けているかがその日のうちに分かること

まずは記録の様式を整えるところからで構いません。無料の点呼記録簿テンプレートをご利用ください。

そのうえで、管理者が全ドライバーの実施状況を毎日確認したいということであれば、KEI録をご検討ください。記録には時刻とGPSが自動で入るため、「いつ記録されたか」自体が証跡になります。私たち自身が運送の現場でこの管理に困っていたので、必要な機能はそこから作りました。

法人での記録管理について、営業所ごとの安全管理者選任や運転者等台帳など、制度面の整理は軽貨物を法人でやるときの記録管理にまとめています。

執筆: 坂本(現役軽貨物ドライバー・配車管理者・KEI録開発者)

本コラムは、現場で毎日法定記録を作成している当事者が執筆しています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令の適用は事業者ごとの状況により異なるため、最終的な判断は国土交通省の一次情報や所轄の運輸支局でご確認ください。

よくあるご質問

ドライバーが記録をつけてくれません。どうすればいいですか?

まず「誰がつけていないか」を毎日把握できる状態を作ることをおすすめします。紙の運用では月末に集めるまで分からず、その時点では遡って書くこともできません(遡っての記載は虚偽記載にあたります)。その日のうちに分かれば、その日に声をかけられます。

月末にまとめて書いてもらうのはだめですか?

だめです。記録を後から遡って記載することは虚偽記載にあたります。書類が揃っていても、日々つけられたものでなければ法令上は問題のある状態です。

提出された記録が、本当に毎日つけられたものか確認する方法はありますか?

紙の場合、提出物からは判別できません。日付が並んでいても、それが日々書かれたのか提出直前にまとめて書かれたのかは分からないためです。時刻やGPSが自動で記録される仕組みであれば、記録そのものが作成時点の証跡になります。

アプリを導入したら、年配のドライバーは使えないのでは?

傾向としてはありますが、実際には個人差のほうが大きいというのが現場の実感です。年配の方でもデジタル機器に慣れている方はすぐ使いこなしていました。慣れていない方も、何度か丁寧に対応すれば必ず使えるようになっています。

委託ドライバーの記録は誰が管理するのですか?

契約形態によって責任の所在が異なるため、この記事では断定を避けます。実際の運用は契約内容と所轄の運輸支局でご確認ください。ただし実務としては、事業者側が実施状況を把握できる状態にしておくほうが安全です。

Next Step

無料テンプレートで、今日から記録を。

点呼記録簿などの無料テンプレート(Excel/PDF)で、まずは記録をはじめられます。