FOLIO 11 KEI録 / Column

紙の記録をやめるまでの3か月。GoodNotes・Excelを経て、自分でアプリを作った話

軽貨物の法定記録を紙からデジタルに移行した3か月の記録。GoodNotesでの手書き、Excel化、そして自作に至るまで。1日15〜20分かかっていた記録が何分になったか、何を作り直したかを現役ドライバーが正直に書きます。

公開日: 2026年7月20日

軽貨物の法定記録を、紙からデジタルに移しました。始めたのが2026年2月頃、完全に紙に戻らなくなったのが5月頃。おおよそ3か月です。

この記事は、その3か月に何をやって、何がうまくいかなかったかの記録です。制度の解説ではありません。同じことをやろうとしている方の参考になればと思って書きました。

先に結論を書いておきます。記録にかかる時間は1日15〜20分から5分程度になりました。 ただ、私にとって本当に効いたのは時間の短縮ではありませんでした。そこが一番書きたいところです。

出発点: 全部が紙だった

もともと、点呼記録簿も業務日報も日常点検も、すべて紙でした。保管義務があるので、当然そのまま紙で保存していました。

意外に思われるかもしれませんが、紙の「量」は問題ではありませんでした。様式は1枚に1か月分が収まる形で、毎日1行ずつ埋めていくもの。点呼で1枚、日報で1枚、事故がなければ月に2枚程度です。1年でも大した厚さにはなりません。

車内にバインダーを積んでおいて、その月が終わったら自宅か事務所に保管する。それだけです。物理的に困っていたわけではないのです。

問題は、毎日の入力そのものでした。

紙の頃、記録に1日どれくらいかかっていたか

実測ではなく感覚値ですが、こんな配分でした。

タイミング内容所要時間
点呼、車両チェック5〜10分
帰宅後業務日報、終了点呼10分程度
合計15〜20分

月20日稼働なら月5〜6.5時間、年間で60〜80時間になります。数字にすると確かに大きい。

ただ、正直に言うと、当時の私は「年間60時間の損失」だとは思っていませんでした。1日15分は、それ単体では大した負担ではないからです。

本当の問題は、時間ではなく優先順位だった

ここが、この記事で一番伝えたいところです。

記録が面倒だった理由は、長いからではありません。現場のことを考えるほうが、常に優先だったからです。

たとえば、新しい配送先に行く日。ルートを調べ、納品方法を確認し、駐車できる場所を探す。そういうことに頭も時間も持っていかれます。その日の終わりに記録を書くのは、正直かなりの負担に感じました。

そしてもうひとつ、これは制度そのものの性質だと思うのですが——

記録は、まだ起こっていない事故に対する担保です。

何も起こっていない状態でこれをつけることに、どこか抵抗がありました。今日も無事に終わった。その事実を紙に書き残す作業に、意味を見出しにくい。

周りのドライバーに聞いても、ほぼ全員が同じことを言っていました。自分の安全を担保するためにやっていると頭では分かっている。それでも負担感のほうが大きい。

紙が悪いのではなく、「後回しにできてしまう」ことが問題でした。 後回しにできるものは、忙しい日ほど後ろに送られます。そうやって記録は形骸化していきます。

なお、記録を後から遡って書くことは虚偽記載にあたるため、やってはいけません(詳しくは点呼記録簿の書き方に書きました)。だからこそ、「その場で終わる」状態を作れるかどうかが本質だと考えるようになりました。

3か月で通った4つの段階

いきなりアプリを作ったわけではありません。順番に4つ試しています。

段階1: 紙のまま(出発点)

前述のとおり。量ではなく、毎日の入力が負担。

段階2: GoodNotesで手書き

最初に試したのが、iPadアプリのGoodNotesです。

やり方は単純で、もともとあった紙の書類をPDFで取り込み、それを複製して月々使っていくというもの。手書きであることは変わりませんが、紙を持ち歩かなくてよくなり、紛失のリスクは減りました。

ただ、書く手間そのものは減っていません。当然といえば当然です。

段階3: Excel化

次に試したのがExcelです。ここで初めて「手書きをやめる」ことになります。

結果から言うと、2週間でやめました。理由は2つあります。

ひとつは、入力がやっぱり面倒だったこと。 キーボードで打つ作業が、車内や帰宅直後の状況に合っていませんでした。項目を選んで埋めていくだけとはいえ、紙に書くのと手間が劇的に変わるわけではない。結局、後回しにできてしまう構造は残ったままでした。

もうひとつは、この仕組みでは周りの人に共有できないと思ったことです。 これが実は大きかった。

記録に困っているのは自分だけではありません。周りのドライバーも同じように面倒がっていました。ただ、Excelファイルは「自分専用の道具」にしかなりません。同じものを誰かに渡しても、その人の運行に合わせて作り替える手間が発生しますし、更新のたびに配り直すことになります。

つまりExcelは、自分の問題は解けても、周りの問題は解けない。2週間使ってみて、そこがはっきりしました。

念のため書いておくと、これは私の使い方の話です。Excelで問題なく回っている方は、そのままで良いと思います。 法令上もまったく問題ありません。

段階4: 自分でアプリを作る

「もっと楽に記録を取れる方法はないか」とずっと考えていて、あるとき「自分で作ってしまえばいいのでは」と思い至りました。

既存の記録アプリを試そうとは思いました。ただ、価格を見て、自分には高いと感じたのが正直なところです。そして、自分で作れば周りのドライバーにも安く出せる、という考えに行き着きました。

なので、他社アプリを実際に使ったうえで「使えなかったから作った」わけではありません。使わずに、価格を理由に自作を選んだというのが事実です。品質についての評価は控えます(各社の料金や特徴は記録アプリの比較記事に、公式サイトの表示にもとづいて整理しています)。

作ってみて分かった、自分用と「人が使うもの」の差

この3か月でいちばん試行錯誤したのが、ここでした。

最初に作り上げたものには、足りない機能がたくさんありました。使いながらブラッシュアップしていく日々です。

そして他のドライバーにも提供しようとした段階で、自分ひとりで使うときには考えもしなかったものが必要になりました

分かりやすい例を挙げます。

機能自分ひとりで使うとき人に使ってもらうとき
名前の入力欄不要(自分しかいない)必要
車両の登録不要(自分の車しかない)必要
コンプラ期限の通知頭に入っている必要
使い方の案内不要(作った本人なので)必要

「誰が記録したか」を残す必要は、自分ひとりなら発生しません。当たり前のことなのですが、実際に人に渡す段になるまで気づきませんでした。

表示や操作の案内も同様です。作った本人には自明でも、初めて触る人には何も分からない。ここのブラッシュアップに一番時間を使いました。

いま、記録にかかっている時間

現在の所要時間です。

タイミング紙の頃現在
5〜10分2〜3分
帰宅後10分程度数分

ひとつ正直に書いておきます。 私自身が使っているバージョンは、帰宅後の入力がほとんど不要で、3タップ程度で完了する状態にしてあります。ただしこれは自分の運行パターンに合わせ込んだ結果で、外部に提供しているアプリで誰もが同じ体験になるわけではありません。

外販しているアプリでは入力が必要な箇所があります。そのうえで、できるだけ簡素になるようにしています。

  • 出発地・到着地は、あらかじめ候補を登録しておいて選ぶだけにする
  • GPS座標を取得できる
  • 時刻も記録できる

「ゼロタップで終わります」とは言えません。ですが、キーボードで打ち込む作業からは離れられます。

紙のほうが良かった点は、いまのところ一つもない

これはよく聞かれるので書いておきます。

紙に戻りたいと思った場面は、いまのところありません。

よく「紙のほうが確実で安心」と言われますが、実務の感覚としては逆だと思っています。破損、汚損、紛失。これらのリスクは、紙のほうが明らかに高いです。

車内に積んでいるバインダーは、雨の日に濡れることもあれば、どこかに置き忘れることもあり得ます。一度失われた紙は戻りません。

いま使っているものは、サーバーにバックアップを取ったうえで、それぞれの端末にも記録が残ります。二重にバックアップがある状態です。データが消えるリスクは、紙より低いと考えています。

これから紙をやめる方へ

3か月かけて移行した立場から言えることは、そう多くありません。ひとつだけ挙げるとすれば、いきなり完璧を目指さないことです。

私自身、GoodNotesとExcelという2つの寄り道をしています。どちらも長続きはしませんでしたが、無駄ではありませんでした。あの2段階がなければ、何が本当の問題なのかは分からなかったと思います。

面倒なのは記録すること自体ではなく、後回しにできてしまうこと。そして自分ひとりが解決しても、周りは困ったまま。この2つの結論には、実際に試さないとたどりつけませんでした。

なので、まず何かひとつ試してみてください。紙のままでも、無料の点呼記録簿テンプレートから始めていただいて構いません。

そのうえで、アプリという選択肢を検討されるなら、私が作ったKEI録は1か月無料でお試しいただけます。まず使ってみて、ご自身の運行に合うかどうかで判断してください。合わなければ、それは仕方のないことだと思っています。

大事なのは、その日のうちに記録が終わる状態を作ることです。手段は何でも構いません。

執筆: 坂本(現役軽貨物ドライバー・配車管理者・KEI録開発者)

本コラムは、現場で毎日法定記録を作成している当事者が執筆しています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令の適用は事業者ごとの状況により異なるため、最終的な判断は国土交通省の一次情報や所轄の運輸支局でご確認ください。

よくあるご質問

紙の記録をデジタルに移行しても法令上問題ありませんか?

問題ありません。国土交通省の資料に、各種の記録・保存はパソコンやスマートフォンで実施可能と明記されています。紙である必要はありません。

移行にはどのくらいの期間がかかりましたか?

私の場合は2026年2月頃に始めて、完全に紙に戻らなくなったのが5月頃でした。おおよそ3か月です。ただしこの期間には、記録だけでなく配車や売上の管理も自作システムに移行した作業が含まれています。

Excelでの管理ではだめだったのですか?

法令上は問題ありません。私の場合は、入力の手間が紙と比べて劇的に減るわけではなく、続かなかったというのが正直なところです。ただしこれは私の使い方の問題で、Excelでうまく回っている方はそのままで良いと思います。

既存の記録アプリは試さなかったのですか?

試そうとは思いましたが、価格を見て自分には高いと感じ、結果的に自分で作る道を選びました。他社アプリを実際に使ったうえでの比較ではないため、品質についての評価は控えます。

紙のほうが良かったと思う点はありますか?

いまのところ一つもありません。破損・汚損・紛失のリスクは、紙よりデータのほうが低いと考えています。サーバーと端末の両方に記録が残るためです。

Next Step

無料テンプレートで、今日から記録を。

点呼記録簿などの無料テンプレート(Excel/PDF)で、まずは記録をはじめられます。